舟漕ぎ大会(9月の第2日曜日)

 沖縄同様,奄美でも舟漕ぎ大会が開かれる。元々は5月5日に行われていたらしいので,奄美の舟漕ぎは沖縄から伝わったものであろう。近年,奄美では夏祭りと併せて行う地区が多い。よって7月の終わりから9月はじめの日曜日には,どこかの村で舟漕ぎ大会が行われていると考えてよい。私の住んでいる村では9月に行われるので,旧盆(旧暦7月15日)明けごろから港で舟漕ぎ練習が始まる。毎日夕方に1時間程度練習する。チーム編成は自由だが,だいたいは集落の青・壮年団や婦人会で編成されるので,本番では集落対抗の色が濃い。


 メンバーは舟を漕ぐのが6名と舵取り1名(場合によってはタイミングをそろえるために笛を吹く人1名が更に加わる)で構成される。舟漕ぎ6名は2人ずつペアになり,前部・中部・後部に座る。舵取りは1番後ろに座る。笛を吹く人がいる場合は1番前に座る。


 舟を速く走らせるにはコツがある。まず舟漕ぎのペアは外側の足を舟のヘリに当て,なるべく外側に重心を置く。そのまま外に落ちてしまわないように内側の足をペアの人の足にそろえ,内側にも力を入れる。櫂(かい=オール)を持つときは内側の手で上部を握り,外側の手で下部を握る。漕ぐときはなるべく前方に櫂(かい)を入れるため,顔を下げ,腰をできるだけ前に倒す。全員でそろえながら上体を起こして水をかき(タイミングがずれるとスピードが落ちる),かき終えるときには水を押し出すようにのびる。水泳をやっている人ならわかると思うが,スピードを出すには休んでいるようにも見える「のび」が重要なのだ。


 しかし,ただ舟を速く走らせるだけでは勝てない。重要なのは舵取りだ。様子を見ながらまっすぐ走らせるのもさることながら,折り返し地点でのターンの差で勝敗は大きく変わる。大回りせず,速くゴールに頭を向けた方が有利。だから舟漕ぎ練習では漕ぐ人の姿勢,タイミングを合わせる練習もするのだが,ターンの舵取りも大事な練習なのである。


 このように全身の筋肉を使い腰を痛めながら練習を重ねても,本番では隣の舟に邪魔されてしまったり(邪魔した方は失格となるが,邪魔された方のタイムが優遇されることもない),潮の流れに流されてしまったり,悪天候にコンディションを乱されたりと,運に頼る部分も大きく,そこがさらに舟漕ぎ大会を盛り上げているのである。

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